2026年から新しい制度【未管理著作物裁定制度】が開始されるとの事で、割と他人事ではないのでこれに対して自分用メモにざっくりまとめました。
文化庁の詳しいPDFはこちら。
結論として、以前は欧州のAI Act向けのAI学習対策としてサイン&ウォーターマーク(WM)入れてるよ。って話を書いたのですが↓、今回の新制度スタートでますます入れる必要性が増えたな―と言う感想です。
【未管理著作物裁定制度】ってどんな制度?
『この作品素敵!是非グッズ(または印刷物etc)に利用させてもらいたい!でも誰の作品か分からないよ~。』
……と言う時に、文化庁が代理となって『代わりに許可出すよー』と国が一時的に利用料を預かる事で著作者不明の著作物を使える様にする制度の様です。
該当する著作物/該当しない著作物
簡単にまとめると
- 著作者も利用ルール(無断転載禁止や商用利用NGなど)の記載や問い合わせ・連絡手段が全くない著作物(誰の物か解らないもの)
- 利用ルールの明記が無く正規の方法で著作者に問い合わせたが、14日以上返事が無かった著作物
が、当制度に該当する著作物になります。
なんかこの文読んだだけで「ん?」ってちょっと頭傾きますね。
ちなみにこの制度の対象外の著作物は
- 利用ルールが明確に記載されている著作物(無断転載・利用禁止等の記載有)
- 利用についての問い合わせ先が明記されている著作物
- 法的に有効な問い合わせ方法で利用について連絡後、ちゃんと返事があった著作物
- 著作権等管理事業者として文化庁に登録してある団体に管理されてる著作物
となっており、どんな著作物でも文化庁に申請・お金を払えば使い放題と言う訳では無さそうです。
利用が判明した場合、後からでも利用料が貰える
「14日間応答無かったら使えるってどう言う事だよ!!」って思うと思いますが(私は思いました)、国が利用料金を著作者に代わって預かってくれる形なので、文化庁のサイトで裁定中の自分の著作物を見付けたら申請すると預かった利用料を貰える仕組みです。
また、利用を止めて欲しい場合は差し止めも可能との事。
利用停止 or 利用許可を出して利用料を貰うかは、著作者が自由に選択出来るそうです。
『法律的に認められる連絡方法』の条件は結構厳しい可能性がある
どうもこの「連絡がつかない」の連絡方法が法的に認められるには
SNSのリプやDMでは認められない可能性が高い
ようです。
どうやらSNSの連絡は確実にアカウント主に確実に通知がいかない場合があるのが理由みたいですね。
以前役所に問い合わせした方のお話によると、
- 連絡した先が著作者が明確に提示している連絡先 or 問い合わせ先である事、または公共の連絡手段である事(配達証明付きの郵便など)
- 利用者の素性(名義・法人名及び担当者名など)・利用目的・契約内容などの契約に必要な詳細を全て開示している事
- 連絡した際の内容がちゃんと契約書として公的に認められる体を持っている事
と、一定の形が整っていないと”連絡した”と法的に認められにくいそうです。
「使って良いですか?」位の気軽な利用連絡だと”連絡がつかなかった”に該当せず却下される可能性が高いみたいですね。
正式な形で連絡が取れなかった場合は文化庁が利用して良いか否か決める
上記の真っ当な連絡方法で利用についての連絡がつかなかった場合は、その著作物を利用して良いか否かを文化庁が審査してくれるようです。
文化庁が利用許可を出した場合、利用者は指定の料金を文化庁に払う事で利用可能となります。
今のところの懸念
「使わないで」と言う拒否が後からしか出来ない
逆に言うと上記制度で許可を貰った著作物はお金払えばいくらでも好きに使えるよ!って言う……。
AI学習の時もそうだったのですが、基本的に”拒否権が無い or 後からしか出来ない”と言うのはどうかと思うのです。
何せ「著作者が分からないから or 返信が無いから」で先にグッズやら物販やらで販売されてしまっても『一切使ってほしくなかった』『商用利用は禁止の作品だった』が通用しない。
後から売れた分のロイヤリティ払うから~とかになっても使ってほしくない作品だったら「違う、そうじゃない」案件でしかないんですよね。
金額が妥当と思えない
文化庁サイト内に【裁定保証金額シミュレーションシステム】と言うものがあるのですが、金額……安くない??
試しに美術(絵画など)を使って販売価格2,000円のグッズを50個作りたい、でシミュレーションしてみたのですが目安は11,000円でした。う~~~~~ん??安くない……???
後から追加で言い値分の利用料上乗せ出来るとかじゃないと、拒否出来ないの上に勝手に値段決められるのフェアじゃない様な……。
しかもこれを免罪符に『文化庁のシミュレーションではこの位の金額でしたよ?』みたいな交渉に使われそうな懸念もあるんですよね。どうでしょう。
とにかく対応・手続き面倒くさそう
いちいち文化庁の裁定中の著作物を著作者が確認して、しかもその著作物の著作者本人である事を証明したり利用差し止めとか申請しなきゃいけない。
有名なプロで個人で活動されてる方とか、問い合わせが何千・何万件と来たらキツそう。企業や事務所持ちでもキツそう。
ちゃんとした形式で連絡してくれる人ばかりでは無さそうとはいえ、中身を確認するだけでも時間掛かりそう……。
割と無理ゲーでは。
連絡が出来ない状態だと勝手に使われ続ける
亡くなってる場合とか入院や海外出張等で長期連絡取れない場合とかどうすればいいのだろうか……。
利用差し止め出来ずに使われ続けちゃうよね?
個人のSNSやブログの写真とかも対象
この制度、イラストや漫画・小説やらの著作物だけでなく個人が趣味で撮った写真なんかも対象。
育児ブログやペットブログで写真載せてる方が多いのに大丈夫だろうか。放置されてるアカウントとかブログは特にヤバいのでは……??
と言うか問題を追ってる人間ならいざ知らず、まったくの一般人が「あなたのSNS(ブログ)の写真を利用したいんですけど!14日経ってもお返事ない場合は未管理著作物裁定制度使って許可貰ったら商用利用させていただきますね!」って急に連絡来ても「???」じゃないでしょうか……。(しかも後半の文を書くとは限らない)
制度知らない世界線の私なら、何通もそんなの来た時点で新手のSPAM扱いで捨てるわ。
無断転載された著作物はどうなるの?
最悪の場合、無断転載者が『著作者でーす』って名乗って利用許可出して利用料ポッケナイナイ出来そうな気がするのですが、対策されてるのだろうか?
あとはトリミングなどでサインやWMが削られて利用された場合、別の犯罪も含まれる事になって利用された著作者への負担が半端なく重くなりそうなのですが……。
問い合わせ詐欺起こりそう問題
『このサイトで利用したのですが~(URL)』→『どれどれ?確認するか~(URLポチ―)』→ウイルスサイトとか詐欺サイトで情報抜かれたりPCハッキングしたから金払えとか言われたり
……ありえ……なくはない、か……??どうだろ……。
サインやWMは入れておいて損はない
とりあえず『無断転載禁止』の文字が入っていればこの制度の対象外になるのは確定……と思っていたのですが、情報を追っていくとデジタルアーカイブの活用関係が絡んでいると言う話もあるようで、
『無断転載禁止・商用利用不可などの定型文は抑止力を持たない可能性がある』
(定型文だけだと例の14日連絡付かなければ使えるよーってなるかも知れない)
ようです。
とは言え今回の発表だけなら無断転載禁止だけで対応出来そうな事が書いてあるので、連絡先が分かるサイン+無断転載(出来たら無断利用も)禁止の文字を入れておくのはけん制になりそうなので、面倒ですがやっておいて損はなさそう。
ですが今の状態だといつ条件が変わるか分からないので、今後も気を付けた方が良いですね。
あ、ちなみに私も最初間違えてたのですが”利用”と”使用”は違うので記載の際は気を付けた方が良いです。
- 利用……その著作物を複製して別のものに使う事
- 使用……その著作物を見たり読んだり聞いたりするのに使う事
となっているので、今回の件でWMに明記する際は『利用』の方を記載するのが正しいみたいです。もう前に付けちゃったWMは直すの面倒だからそのままで良いや……。
利用料を事前に告知しておくのも有効になる、かも?
気休め程度ですがサイト・ブログ運営者は専用ページ、SNSの場合は固定投稿かbioからURL誘導などで利用した場合の料金書いておくのも良さそうです。
『○○の著作物の無断転載・無断利用は禁止しております。また文化庁の利用は許可しません。
利用した場合は1点または1ページにつき100,000円~(+WEB掲載の場合×掲載日数分)の全額を頂きます。
利用が確認された場合は上記価格での利用料支払いに利用者・文化庁共に同意をしたとみなし請求いたします。』
……みたいな感じでしょうか?(上記は他の方を参考に適当に考えた例です)
どこまで効力があるかはわからないのですが、やれる予防は全てやっておくのが良さそうだな、と思っております。
正直な感想……いくらでも悪用出来そうな制度で怖い
もう1度言いますが、この制度の不安な点は連絡がとれなかった際の拒否権が著作者側に無い事一択な気がします。
利用出来る様になるまでの敷居がある程度高いとはいえ、文化庁が利用許可を出すか否か考えるて……。
ただ実際始まってみないと解らないところがあるので(料金がどの位で見積もりされるのかとか)、今のところ追加の情報を集めて様子を見ると言う事しか出来ない感じですね。
この制度が文化の良い方向への発展に繋がる事を願ってます。
【2025年4月25日追記】”問い合わせ先”と”連絡先”の違いについて
最初この記事を書いた時「問い合わせ先も連絡先も一緒での扱いで良いのかな?」と思っていたのですが、どうやら違う様でした……勉強不足で申し訳ないです。
- 問い合わせ先……著作物の利用ルールについて問い合わせ出来るもの
- 連絡先……著作物の権利者に連絡を取るためのもの
で、今回の制度は問い合わせ先が書いてあるものは対象外との事です。(連絡して14日以上返事が無くても制度を利用して著作物を使う事は出来ない)
逆に連絡先しか分らない場合、連絡して14日以上返事が無いと今回の制度を利用して申請が通れば著作物を使えるようになる様です。
なのでSNS等はbioに『利用希望の場合はこちら~(メールアドレス、コンタクトフォームURL、DMください、など)』と記載して問い合わせ先を明確にしておく事で”14日以上返答が無い状態”でも制度を利用して使われる事を避けられる、と。
いや、ちょっと面倒と言うか複雑だなぁ……。
【2025年5月25日追記】早速悪用されてない?
原作者が不在となっている(原作者のブログが2011年8月から更新が途絶えている模様)フリーゲームに対し、アメリカの企業が裁定制度を理由に『知的財産権を正式に保有している』として発表したそうです。
ただちょっとこのゲーム周りは動きがかなり複雑っぽいので、気になる方はこちらのサイトの記事をお読みいただければと思います。(今回の件についての矛盾の指摘などもされてます)
原作者を差し置き『ヴァンガードプリンセス』巡って争う二社、時系列でこれまでを紹介
【5月27日追記】↑の企業が無言の撤回をしたそうです
文化庁も困惑の「裁定制度」濫用事例、無言の撤回?権利者不在のまま行われた『ヴァンガードプリンセス』の、第三者企業による著作権主張声明が突然の削除へ
えぇ……。
でも始まる前にこの制度の穴が見えたのは良かった……のか??
修正・追加がありましたら随時更新します。
また、誤った情報があった場合は確認後に迅速に修正いたしますので、気付かれた方がいらっしゃいましたらご連絡いただけますと幸いです💦
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